Cycle.meに学ぶ現代ニーズの捉え方ー「ありそうでなかった!」を形に

2024.03.01

目まぐるしく変化する現代社会において、人々を取り巻く環境や意識の変化をとらえた事業開発の重要性が高まっています。これからの時代のビジネスを創る上で、どのような視点に留意しながら取り組めば良いのでしょうか?
今回は、データを活用しながら生活者中心のモノづくりを展開する株式会社ドットミーの知念社長を迎え、現代のニーズを踏まえたより良いライフスタイルを提案するブランド『Cycle.me』を立ち上げた経緯や想いについて伺いました。

知念 孝祥ジョナサン 氏

株式会社ドットミー 代表取締役社長

2009年、三井物産に入社し、ICT事業本部でデジタルビジネス分野を中心に担当。2017年にAIを活用したSNS解析ツールを開発する英国のデータサイエンス企業への出資に携わり、同社サービスの日本展開を主導した。SNSを中心にブランド開発し直接的に消費者に販売するビジネスモデル(D2C;Direct to Consumer)の台頭を目の当たりにしたことをきっかけに、2021年、流通事業本部にてD2Cの商品開発からブランド開発、コミュニケーション設計まで行う株式会社ドットミーを設立。同社の代表取締役社長を務める。

自らブランドを展開し、開発も支援する、その二刀流を確立するまで

ドットミーは、生活者中心のブランドの開発を展開しています。
当社の立ち上げは、私が三井物産勤務時代に、SNS解析ソリューションに携わる中で直面した課題意識が契機となっています。当時、私はデジタル商材を取り扱うビジネスを担当しており、ビジネスパートナーが商品開発や事業戦略を立てる際に、必要なトレンド分析を行うSNS解析サービスを提供していました。
2018年頃から、小売流通網での大量生産・大量販売が一般的であった大手メーカーの手法とは一線を画した、いわゆるD2C※1 の販売スキームが台頭し始めます。SNSをはじめとしたソーシャルデータからトレンドをつかみ、小規模かつクイックに生産し、EC※2 で販売するブランドが増えてきました。こうした新ブランドはオンラインで着実に顧客を獲得し、徐々にオフラインにも台頭して店頭のシェアを奪うため、既存ブランドにとっては脅威になりつつありました。
マーケティングにおけるこうした大転換が起きる中、トレンド解析ソリューションを提供するだけでなく、D2Cで直接的に消費者に販売する商品の開発からブランド開発までを一気通貫でサポートしてもらえないかと、当時ビジネスパートナーだった大手食品メーカーからご相談いただいたのです。
そこで、私たち自身がデータを活用して、商品開発・販売・事業運営を行い、その運営によって培われるマーケティング知見をもとに、ビジネスパートナーのブランド開発を支援できないだろうかと考えました。三井物産グループの総合的なバリューチェーンを活かした「商品開発力」と「商品販売力」、この双方を掛け合わせることで、これまでにないサービス・商品を形にして、提供する――そうした価値創造を目指して、2021年7月にドットミーを設立しました。

※1 D2C(Direct to Consumer):企業が自社で企画・生産した商品を仲介業者や小売店を介さず、インターネット上のショッピングサイトや直営店舗などの自社チャネルで消費者と直接取引する販売方法やビジネスモデル。

※2 EC(Electronic Commerce):電子商取引。Eコマースとも呼ばれ、インターネット上でサービスや商品の売買をすることを指す。

私たちが自社ブランド商品として展開しているCycle.meは、1日のライフサイクルに寄り添い、必要な栄養素をとるタイミングでオン/オフを切り替える、そういったスタイルを提案することでココロ・カラダの健やかさをもたらすブランドです。
商品開発にあたり、まず、商品の利用者となる生活者の動向をSNSから解析していきました。
解析していく中で、「エナジーマネジメント」に関する情報発信が伸びていることがわかってきました。具体的にいうと「朝食にこれを食べると1日の元気をチャージできる」や、「寝る前にこれを飲むとリラックスできる」、といった1日の心身のあり方をマネジメントする投稿が増加していました。ここから、1日のサイクルを整えてくれるような食品へのニーズが高まっていると仮説を立てました。コロナ禍において、仕事とプライベートの切り替えが曖昧になってしまい、そういったストレスが顕在化した部分もあるように思われました。朝、昼、夜といった1日のサイクルをダラダラと過ごすのではなく、時間帯の切り替えにアクセントをもたらすことで生活にメリハリができる――そのような商品を提案することで、“自然にきりかえる生活”をサポートできないか?という想いがCycle.meブランドの出発点になりました。

テクノロジーは必須ですが、それを正しく扱うにはヒトの力が欠かせません。私が以前に担当していたトレンド予兆分析システムの技術を使うと、膨大な工数がかかる分析を大幅に短縮することができます。例えば「ゆず」という言葉一つとっても、飲み物で使われている「ゆず」なのか、鍋などで薬味として使われる「ゆず」なのか、はたまたスキンケアで使われる「ゆず」なのか、文脈で、その意味は全く変わってきます。そのため、区切られたカテゴリーの中の「ゆず」の背景、文脈にフォーカスできなければ、解析の解像度は落ちてしまいます。これまでは難しいとされてきた、こうした文脈を読み取る技術も、トレンド予兆分析システムの技術を使うと可能となります。一方、各キーワードを的確に戦略やコンセプトに落とし込むには、マーケターのノウハウが欠かせません。さらに、並行してユーザーに直接ヒアリングを行い、データ分析だけではどうしても拾いきれない部分をリアルな声で補うことで、新たな発見が得られ、コンセプトをさらに研ぎ澄ますことができました。

自分へのご褒美?「健康食品」の概念を覆す

データ解析の中で見えたもう一つの大きなトレンドが、人々の意識が、健康やウェルネスへ向かっているということでした。私たちは、これを「機能的価値」と「情緒的価値」の2つの切り口でブランドに落とし込んでいきました。
「機能的価値」は、自分のサイクルにあった健康的な食品を、時間帯のシーンごとに合わせて手早くとれること、です。ただ、健康を考えたとき、栄養バランスが大切なことはわかってはいるけれど何から始めたら良いのか分からない、いざ何かをやろうとすると面倒くさい、とマイナス思考になってしまいがちですし、健康に良いものだから美味しくないだろう…といった健康食品に対するイメージがあります。だからこそ、健康のために「~しなければ」という義務感からではなく、「自分へのご褒美」として、ちょっと良いものを選ぼう!と、前向きな気持ちで、楽しく、毎日簡単に取り入れることができる健康食品にニーズがあると考えました。そこで、「摂らなきゃいけない」という思いを転換し、「情緒的価値」として取り入れ、「とらなきゃに、しあわせを」というメッセージを掲げています。従来の「健康食品」にはなかった、手に取りやすく、おしゃれで、シンプルなデザイン・カラーを採用していることも工夫の一つです。食品のパッケージカラーにグレーを用いることは異例といえますが、インテリアに、白・黒・グレーといった色が多いことから、グレーのパッケージカラーは、オフィスや家といった環境になじみやすく、オフィスでパッケージカラーが人目を引いたり、浮いたりすることがないと思います。
ブランドストーリーの文言は、メンバーと何度も議論を重ねながらブラッシュアップしていきました。情緒的価値を訴求しつつ、機能的価値である「おいしく、簡単に、しっかり栄養を摂れる」というポイントも伝えられるメッセージを目指しました。

ドットミーの強みは、三井物産の総合力に加え、社外のパートナーと連携しながら、まさに入り口から出口までを一気通貫でサポートできるバリューチェーンを構築していることです。
SNS解析技術を駆使して市場動向を分析しコンセプトを立案、そして、モノ作りの工程においても多角的に提案ができることに加え、共同出資者で事業パートナーである博報堂の優秀なクリエイティブネットワークによってブランド開発ができます。ECの売り場づくりやマーケティング分析は、ドットミーが担っていますが、小売展開などオフラインでの販売に関しては、三井物産がさまざまな流通拡販力を有しています。このように、各工程における社内外の高い専門性を横断的につなぎ、スピーディな商品開発を実現できるドットミーは、そのハブとしての役割も担っています。
かつて「一貫してサポートしてもらえないか」と相談を受け、当社設立のきっかけとなった大手食品メーカーとも、実際に共同開発した商品を展開しています。ワンストップで開発・販売支援サービスを提供できるため、販売までの所要期間を大きく短縮できた他、販売後の反響がリアルタイムで共有されるため、次の開発にも活かしていくことができています。

全ての人が「自分らしく生きる」を、当たり前に。

ありがたいことにSNSなどを通して「おいしかった」、「この商品が良かった」といった多くの声をいただいています。
複数のメーカーが参画し商品ラインナップを展開しており、それぞれの強みを発揮していくことで、手頃な価格での販売が実現できていることも、継続していただきやすいポイントだと感じています。現在、さらに多くのメーカーに興味を持っていただいており、Cycle. meやこれをベースとした共同開発の引き合いもあります。そうしたことからも、各企業のウェルビーイングに対する貢献意識や参画意欲の高まりを実感しています。
Cycle.meが「ウェルビーイングブランド」を打ち出しているように、私たちの取り組みの先にはウェルビーイングの実現があります。その点において「食」は、始まりにすぎません。ウェルビーイングの実現に向けて、今後さらに、さまざまなサービスと連携していきたいと考えています。例えば、バイタルデータを活用して、人々の生活リズムを整え、生産性向上をサポートするアプリなどです。食べること、眠ること、運動すること、そして、「人」がいる環境には、机や椅子などの家具、レイアウトなどの空間設計、照明、香りと、ウェルネスは、生活の全てに広がっています。それらに向き合う上で、商品・サービス開発のための横断的プラットフォームがあるからこそ、提案できる価値があると考えています。

「これをやる、やらない」というよりは、全てにおいて、アンコンシャス・バイアスを持たない状態で考えることを一番大切にしています。これまで世間をあっと言わせてきたイノベーティブな取り組みは、全て常識を取り払ったまっさらな視点・思考の先で生まれています。自分たちの経験や先入観だけで「できない」と決め込んでしまっては、新しい挑戦は生まれません。その意味では、「ルールを決めすぎないこと」も大事だと考えています。

私たちのミッションは、みなさんが「自分らしく生きる」を当たり前にすることです。社会における環境やニーズの変化を、いち早く捉えながら、今を生きるみなさんそれぞれが、自分らしさを大切にできる、そんな商品やサービスを今後もお届けしていきたいと考えています。
ビジネスにおいては、ブランドの共同開発を通じたオープンイノベーションを活性化させながら、課題を発見し、新たな価値を共創していきたいと思っています。ぜひ、パートナーとして、私たちに要望や課題をぶつけていただき、高効率な試行錯誤とエキサイティングで多様なアイデアをともに具現化できたら、と思います。
Cycle.meでは、引き続きさまざまな商品を展開していきます。最寄りのセブン-イレブンやECサイトで購入できますので、興味を持ってくださった方は、ぜひ試してみてください!